neomusha

ゲームとテックを、ぶった斬る。

北斗の拳

── 1986年、「東映の世紀末」が幕を開ける ──

PROLOGUE // 伝説の漢達

北斗の拳

(1986年8月10日発売 FC 東映動画)

……時は1983年。

当時、一世を風靡していた週刊少年ジャンプに、突如としてある劇画タッチの漫画が連載される。その第一話を読んだ当時の少年たちは、皆一様に頭をカチ割られたような衝撃を受けた。なぜならその漫画は、明らかに他の連載陣とは次元の違う、むせ返るような血と汗のオーラを放っていたからだ。

「宿命を背負った漢(おとこ)たちの物語」

それまでにない残酷かつリアルな描写と、引き込まれるような重厚なストーリー。そしてラオウに代表される「圧倒的に強すぎる漢たち」の存在に、当時の少年たちは驚き憧れ、皆等しく己の拳でを目指そうと(そして秘孔を突こうと)したものだった。
そう、その漫画こそがあの「北斗の拳」。今なお世界中で語り継がれる、伝説の漫画である。

男のバイブル

北斗の拳全27巻・別名「男のバイブル」

少年たちの魂に「北斗七星」を刻み込んだ不朽の名作である。


別名「男の義務教育」。そんな最強の漫画が、ついにファミコンでゲーム化される!
しかも製作メーカーは、あの『東映動画』だ!!

このニュースに、当時の少年たちは歓喜の雄叫びを上げたに違いない。あまりの喜びに、着ている服を破り捨てて泣き叫ぶ子もいたかもしれない。何せメーカーは、大ヒット中のアニメ版「北斗の拳」を直々に手掛けている、あの東映動画(現・東映アニメーション)なのだ。

「東映なら……奴らなら、必ず最高のゲームをやってくれる!!」

恐らく、日本中の純真な少年たちがそう確信したことだろう。

しかし、運命とはどこまでも非情で、皮肉なものであった。

この東映動画、一体どこでどう「やってくれる」の意味を取り違えてしまったのか。少年たちの期待を粉々に打ち砕く、まったく別の意味での『やってくれたな(怒)』」という絶望の塊をカセットに詰め込んで発売してしまったのである。

それでは早速、当時の少年たちを阿鼻叫喚の地獄へと叩き落とした、狂気の「東映ワールド」へと踏み込んでみよう。

TOEI WORLD // 東映動画という名の迷宮

カセットをセットし、震える手でスタートボタンを押す。すると……。

謎のスタート

ここは何処? そして、あなたは誰?

何の前触れもなく荒野に放り出され、気分は完全に不思議の国のアリス状態である。

開始早々、プレイヤーの認知を破壊しに来る東映スタイル。オープニングや状況説明などという生ぬるいものは一切ない。「親切設計」という言葉は、199X年の世界には存在しないのだ。

ケンと表記

ただ、画面左上のライフゲージに「ケン」と表記されていることから、かろうじて画面中央に突っ立っているのがケンシロウなのだと推測できる。……推測はできるのだが。

全身タイツ?

アウトである。ビジュアルが限界ギリギリすぎる。

着ている服は、一歩間違えればただの全身タイツ。いや、ピッチピチのフィット感を見るに、むしろ競泳用水着を着ているようにすら見える。

修羅の国へ

どうせなら、この格好のまま海を渡って修羅の国まで泳いで行ってほしい。

さらに深刻な問題がある。一応、北斗神拳らしき構えをとってはいるのだが……。

猫パンチ?

手首が完全に死んでいる(ヘタっている)。

構えの時点で緊張感が完全に枯渇している。神拳の継承者というよりは、昼下がりの公園で鳩を追いかけているおっさんだ。今にもミッキー・ローク並の力無い猫パンチを放ちそうで、別の意味で恐怖を感じる。

しかし、手首の弱さなど些底な問題だった。このケンシロウ、最大にして致命的な欠陥を抱えている。

のっぺらぼう

見事なまでの「のっぺらぼう」である。

NO FACE。東映動画は「無」の境地をファミコンのグラフィックで表現したかったのだろうか。お前、前見えてるのか? いや、それ以前に戦う気(見る気)はあるのか?

いちいち画面に向かってツッコミを入れるのも疲れてきたので、仕方なくこちらで眼と口を描き足してあげることにした。

眼口GET

眼と口、GET!!

……いや、誰だお前。余計に正体が判らなくなってしまった。絶妙に腹の立つ顔をしている。

ベストな顔?

やはり、ファミコン的には「点」の顔がベストなのだろうか……。

だがケンシロウよ。本当に前が見えない状態(のっぺらぼう)で、この修羅の世紀末を戦い抜いていけるというのか? お前の真っすぐな意見を是非聞かせてくれ、ケン!

シュウ

「かつて……眼は見えずとも戦い続けた男がいた……」

……だそうです。南斗白鷺拳のシュウ様が言うなら間違いない。このまま進むとしよう。

SYSTEM CRASH // 網膜へのダイレクトアタック

シュウ様の言葉(幻聴)に励まされ、さらにゲームを進めていくと、画面上では早くも凄まじい事態が発生していた。

背景バグ

「崩壊した街」を、カセット半刺しバグと同等のグラフィックで再現。

……背景、完全にバグってない?
これでは敵の攻撃の前に、プレイヤーの視神経がやられてしまう。

世紀末の荒廃っぷりを「ファミコンのバグ画面」で表現するとは。東映動画、この時すでに未来(現代アート)に生きていたのかもしれない。

しかし驚くべきことに、なんとこれで正常仕様らしいのだ。これは恐らく、あまりの目に悪さにプレイヤー自らリセットボタンを押させようとする、東映動画からの心理的な罠(トラップ)だと思われる。

そう……このゲームにおいて、真に恐るべき敵はモヒカンや世紀末覇者ではない。この狂気のバグ画面に代表されるような、開発陣の常軌を逸したお節介アレンジ──通称『東映トラップ』とも、プレイヤーは孤独に戦っていかなければならないのだ。

襲い来る東映トラップを葬り去るため、荒野へと独り歩み出すケンシロウ。
……と、ここで一つだけ褒めておきたい点がある。さすがは日本を代表するアニメ制作会社・東映動画。ケンシロウの歩行アニメーションだけは、無駄に滑らかなのだ。

ただし、十字キーを右に入れて彼を「後退」させた瞬間に、奇跡のステップが発動する。

1UP 0003900
ケン
HIT 0013
ムーンウォーク

完 全 に ム ー ン ウ ォ ー ク で あ る 。

摩擦係数ゼロ。世紀末のキング・オブ・ポップの誕生である。

その流麗すぎる足捌きは、本家すらも完璧に凌駕してしまっている。

マイケル負ける

「くっ……悔しいが君の勝ちだケン」

ポウッ

「 ポ ウ ッ ! 」

いや、マイケルにダンスバトルで勝ってどうする。

あんたの倒すべき敵は、ポップスターではなくモヒカンだろう。頼むから真面目に暗殺拳を使ってくれ。

THE ADVERSARIES // 武空術とあべしの起源

モヒカン出現

気を取り直して進むと、世紀末の代名詞とも言える「モヒカン」が出現。

モヒカン出現

モヒカンと言えば雑魚、雑魚と言えばモヒカン。北斗の世界においてはショッカー戦闘員と同格の存在である。
……が。

武空術

なんとこのモヒカン共、普通に武空術を使ってきやがった。
しかも軌道が絶妙にいやらしく、ほぼ回避不可能。どうやら東映動画の手によって、雑魚すらも理不尽にパワーアップされている模様だ。

重力を完全に無視して宙を舞う雑魚共。これが東映動画が描く「北斗」の世界だ。

「いくらなんでも普通のモヒカンが空を飛ぶわけないだろ! 漫画にそんなシーンねーよ東映!」
……誰もが画面に向かってそう叫びたくなるに違いない。当然、私もそう思って原作を読み返してみたのだが。

空中浮遊

(コミック第一巻 P29・30参照)

普通に飛んでました。(全員)

……やるな東映動画。原作の1コマを忠実に(そして悪意たっぷりに)ゲームシステムへ落とし込んでいるとは恐れ入った。

しかし、こちらは一子相伝の北斗神拳伝承者、ケンシロウである。モヒカンの武空術ごときに負けてはいられない。パンチで秘孔を突き、蹴り一発で星屑のように吹き飛ばす。

蹴り

蹴り一閃

秘孔

秘孔突き

強いぞケン!

……しかし、何故かケンシロウ自身も敵からボコられると、突然空の彼方へと軽やかに吹き飛んでいってしまうのだ。

吹き飛ぶケン

カッコ悪いぞケン!!

あんたは主人公なんだから、雑魚と同じ物理法則で宙を舞わなくていいんだよ……。

一方、ケンシロウに秘孔を突かれたモヒカンはというと──
みるみるうちに異常な脈打ちを始め、最後に「ポキッ」と見事な直角に折れ曲がって果てる。

脈打つモヒカン

脈打つモヒカン

折れるモヒカン

折れるモヒカン

人体構造の概念を完全に無視した死に様。人間としての尊厳を捨て、単なる「幾何学的なオブジェクト」へと成り下がった瞬間である。

こうなってしまっては、このモヒカンに人間としての未来は一切ない。

ネス湖

ネス湖のネッシー

レイクエンジェル

レイクエンジェル

この美しいフォルム(直角)を活かすなら、ネス湖にでも持って行って浮かべるか、強引にレイクエンジェルの仲間にでも加えてあげるのがせめてもの優しさだろう。

南無〜。

ちなみに道中では、ノーマルモヒカンの他にショッキングピンクの新種モヒカンが登場する。

ピンクモヒカン

このピンクモヒカンを倒すと、あの有名な断末魔「あべし」の文字が具現化し、ふわふわと宙に舞い上がるのだ。

あべし

問題のあべし

あべし取る

この「あべし」の文字を取ると、ケンシロウのオーラゲージがみるみるパワーアップ。最終的には気合のみで己の服をぶち破り、お約束のハルク状態(上着リセット)になるという原作愛溢れるシステムなのだが……。

ここで、拾った文字をよく見てほしい。

あぺし

『 あ ぺ し 』

痛い

痛っ!

濁点が半濁点になるだけで、圧倒的なマヌケ感。

これも東映アレンジなのだろうか……? 世紀末の凄惨な断末魔すら、「ぺ」の一文字でコミカルに変貌を遂げてしまった。東映動画、恐るべし。

LOST IN WASTELAND // 孤独な少年は嘘をつく

さて、雑魚の断末魔が「あぺし」であるという世紀末の真理に気づきながらも、荒野をひたすら前へと進むケンシロウ。
しかし、いくら歩いても一向にボスの気配がない。「これはおかしいぞ?」と不審に思い調べてみると、どうやらこのステージはループ構造になっており、どこかに潜むバットが道案内役として必要になるらしい。

バットは?

その間にも発狂したモヒカン共が容赦なく斧を投げつけてきて、ケンシロウの体力(とプレイヤーの精神力)はゴリゴリと削られていく。

ケンシロウの心の叫び

「一体どこに隠れているんだバットよ!」

※心の叫び

バットいた

……居ました。

なんだこの絶妙な気持ち悪さは。人見知りにも程がある。バグで崩壊した廃墟の扉から半身だけを覗かせるその姿は、味方というより完全にJホラーの地縛霊である。

気取りを直し、この地縛霊(バット)が指し示す通りに扉へと入っていくケンシロウ。しかし、彼の道案内に従えば従うほど事態は悪化していく。

哀愁のケン

バット捜索に疲れ果て、よたりながら廃墟の中に消えていくケンシロウ。
その背中には北斗神拳伝承者としての威厳など微塵もなく、ただの哀愁しか漂っていない。

迷うケン

そしてその後、ボスに辿り着くどころか、完全に同じ場所をループし始めたではないか。

ウロウロと迷い歩くその姿は、もはや救世主ではなく、ヤンキーのカツアゲから逃げ回るいじめられっ子のようである。

諦めケン

「こ、ここまでか……」

度重なるループと理不尽な猛攻に、さすがのケンシロウも完全に心が折れ、世紀末の荒野で諦めモードに入ってしまった。

己の勘や努力ではどうにもならない。こうなれば現代のテクノロジー(ネットの攻略サイト)に頼るしかない。一縷の望みを託して検索した画面に、信じられない一文が記されていた。

【注意】実はこのバット、嘘をつきます。

……ウソ。
うそ?
えっ、嘘!?

バットお前もか

バット、お前もか!!

世紀末の世界では、絶対的な味方であるはずの少年すらもプレイヤーを陥れるトラップとして機能しているらしい。東映動画はゲームの難易度を上げるために、「人間の善意」すらも容赦なく切り捨てたのだ。

嘘だと言ってくれバット! 実はただの偽者だったと言ってくれ!

バットの顔

「実はゴーグルに見えるのが目で、目に見えるのが鼻でした」
とか言ってくれバット!!

……もはやプレイヤー側の認知が完全に歪み始めている。味方の裏切りという東映トラップの最深部で、我々の正気度はとっくに限界を迎えていた。

THE RIVALS // 宿命という名の使い回し

バットの嘘という精神的ブラッドクロスを乗り越え、ケンシロウはいよいよ宿敵たちが待つ死闘のステージへと足を踏み入れる。
ここから始まるボス戦の最大の醍醐味、それは特定の条件を満たすことで炸裂する「奥義」の存在だ。北斗神拳の真髄たる圧倒的な暴力で、立ち塞がる強敵(とも)たちを粉砕しよう!!

■ 1面ボス // ハート様

ハート様

拳法殺しの異名を持つ、世紀末デブのカリスマが立ちはだかる!

イノブタ

バトル開始のゴングと同時に、画面を揺らしてイノブタの如く猛突進してくる圧巻のプレッシャー!

ふくよかな御腹

迫り来る巨大な肉の壁に対し、怒涛の蹴りを10発ブチ込んでふくよかな御腹をベコンッと凹ませろ!そして、無防備になったその御腹に必殺の拳を叩き込んだ瞬間、対デブ専用奥義「北斗柔破斬」が火を噴く!!

ひでぶ

「ひでぶ!!」

飛び散る肉片。本来なら自分の血を見て「いてえよ〜!!」と発狂するはずが、一切の感情を見せずに爆散。分厚い脂肪(特殊ゴム体質)との死闘は、豚を屠殺場へ送るかのような完璧な断末魔と共に幕を閉じた。

■ 2面ボス // シン

ケンシロウの胸に七つの傷を刻んだ宿命の男、南斗孤鷲拳のシン!

シン

……のはずなのだが、画面に現れたのはシンの面影が1ミリも感じられない青い服の男

シン

動きこんなんです

シン

しかも、南斗聖拳の華麗な手刀(突き)を見せることもなく、ひたすら単調に飛び道具を投げてくるだけという体たらく。愛に狂い、拳の真髄すら忘れてしまったのか!
目を覚まさせるため、怒りの奥義を叩き込む!!

百裂拳

原作の「北斗十字斬」ではなく、なぜか百裂拳が炸裂!

本来の十字斬は「お前は1分後に死ぬ」というロマン技なのに、即死の百裂拳で粉砕。ケンシロウの「お前の執念はその程度のものだったのか」という台詞を東映動画に投げつけたい。「力こそが正義」と嘯いたKINGの最期すら、このゲームではただのサンドバッグである。

■ 3面ボス // ジャギ

ジャギ

「俺の名を言ってみろ!」でお馴染み、北斗のハッタリ王ジャギとの因縁の対決!
ショットガンと含み針による予測不能な姑息な猛攻をかいくぐり、兄への怒りを込めた拳を叩き込め! トドメに炸裂するのは、人間の神経を極限まで狂わせる狂気の奥義「醒鋭孔」だァッ!!

醒鋭孔

(ドォォォーーンッ!!)

「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねえ!!」とイキっていたジャギ様だが、そもそも『醒鋭孔』は胸の秘孔(龍頷)を突き、触れただけでも激痛が走るように痛感を剥き出しにする技。決してC4爆弾のように対象を大爆発させる奥義ではない。東映動画の解釈は常に物理を超越している。

■ 4面ボス // サウザー

サウザー?

愛深きゆえに愛を捨てた最強の帝王、聖帝サウザー降臨!!
……って誰ですか?
もしかしてお前がサウザーですか?

サウザー??

しかも攻撃はシンと同じく飛び道具のみです
それでいいのかサウザー!きっとお師匠様も泣いておられるぞ!

怒りに任せて情け無用の「北斗有情猛翔破」で葬り去りたかったのだが、奥義のコマンド入力判定がシビアすぎて発動できなかった。飛び回るサウザーにパンチ×3なんて無理だぜ!

サウザー死す

「お・・・お師さん・・・」

「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の威厳も、秘孔の表裏が逆という帝王の体すらも再現されず、最後は異常に膨らみ続ける自分の大胸筋に驚きながら息絶える聖帝。本来なら極星十字拳を破ってからの情け深い奥義で散るはずが……こんな使い回しの最期でオウガイ先生が納得するのだろうか。

■ 5面ボス // ラオウ

ラオウ

ついに迎えた天地を揺るがす最終決戦! 北斗最強の漢、世紀末覇者ラオウ(拳王)!!
画面越しにも伝わってくるすさまじい闘気(オーラ)のプレッシャー。ラオウの拳をワンパンでも食らえば、ケンシロウの身体は紙くずのように画面の端まで吹き飛ばされてしまうという絶望的な破壊力だ!
死と隣り合わせの極限状態の中、強烈なアッパーをギリギリで躱し、ジャンプ攻撃で空から地道に覇者の体力を削り落とす!!

ラオウ最期

「わが生涯に一片の悔いなし!!」

本来なら「天に滅せい!」と闘気を放ち、立ったまま大往生を遂げるはずの覇王。散々東映トラップに振り回されたゲームだったが、最後だけは見事にラオウの名言に救われ、美味しいところを全部持っていかれた感がある。愛馬・黒王号もさぞ呆れていることだろう。

EPILOGUE // 強敵(とも)は東映だった

幾多の理不尽なトラップをくぐり抜け、世紀末覇者ラオウとの死闘を制したケンシロウ。
そしてついに、愛するユリアとの感動の再会を果たすのである。

ユリア再会

……あれ? よく見ると、明らかにユリアの方がゴツくないか?

慈母星の宿命を背負った結果、肩幅がラオウ並にビルドアップされてしまったのだろうか。いや違う、これは度重なる「東映トラップ」による極度のストレスと疲労困憊によって、ケンシロウの肉体とドット絵が極限まで萎縮してしまったと考える方が妥当だろう。

強敵だった

「ふうっ、強敵(とも)だったぜ……
東映動画

激闘の果てにケンシロウ(とプレイヤー)が見たものは、カセット半刺しのごときバグ背景、息を吐くように嘘をつく少年、そして物理法則をあざ笑いながら空を舞うモヒカンたちの残像だった。

「愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!!愛ゆえに人は悲しまねばならぬ!!」

かつて聖帝サウザーはそう叫んだが、まさにその通りである。
アニメのクオリティを信じた原作への『愛』ゆえに、当時の少年たちはこの理不尽すぎるゲームシステムに苦しみ、涙し、そしてクソゲーの痛みを学んだのだ。

さらばケンシロウ! さらば東映動画!このカセットを抜く頃には、プレイヤーの正気度は
もう死んでいる!!

── 北斗の歴史にまた一つ決して忘れられない「迷作」の1ページが刻まれたのである ──